北朝鮮の人との邂逅
ブルガリアで最も印象的であった思い出の1つである北朝鮮学生との交流について述べようと思う.
北朝鮮と聞けば実態も不明でただ恐ろしい国という印象しかないし,彼らの行動することを肯定するのでもないが,そこに住む人がいるということ.そういう国であっても誰かにとっては愛すべき祖国であることを忘れてはならないと感じた.
最初に彼らに会ったのは大学2年生の授業であった.しかし同じ学年でも彼らの年齢は一様ではなかった.僕のように21-2才の学生もいたが,驚いたのは17歳の学生が居たことである.おそらく彼女は飛び級ができるほど優秀なのだろうと推測された.
しかし彼女が優秀であることに疑問は持たなかった。なぜなら彼らは在ブルガリア北朝鮮大使館で働く人のご子息たちであるからだ.外国の大使館で働く人はエリート階層におり,その子供たちも英才教育を受けてきたと考えられる.
彼らが授業に参加しているのは,ブルガリアが北朝鮮と日本やアメリカと比べると友好的な関係にあるからである.例えばソフィア大学には北朝鮮との交流プログラムもある。参加者は北朝鮮の大学で勉強することができるのである.
さらに彼らは北朝鮮から逃げてきたのではなく自分の国が好きと考えているのである.日本にいて,北朝鮮が嫌で逃げてきた人と会うことは出来るかもしれないが,北朝鮮が好きという人に会うのは北朝鮮へ行く以外ないと考えられる.また外国の大使館で働く人というのは国を出ることを許されるほど信用されているし忠誠心も強いということである.そういった環境で育った人に会う機会がこれからあるとは考えにくい.
こういった彼らの特殊な背景から自分は非常に興味をもち授業の前などに話すようになった.文化など当たり障りのない内容を話すのも良いが,政治問題など,もっと突っ込んだことを聞きたくなった.
しかし普段日本にいては北朝鮮について悪い印象の情報しか聞いていなく,それを直接言うのは彼らを傷つけることになるかもしれないと思い中々踏み出せずにいた.
そんな時に一人の生徒と仲良くなった。彼は北朝鮮のグループの中でも人際フレンドリーであった。そして遂に意を決し,彼と懸念の話題について話すことにした。しかし急に始めるのも悪いので彼に許可を求めると彼は快諾してくれた.まとめると
指導者について:
指導者は神であるというように教育されていない。彼は神でなく、人間で政府から
金をもらっているという立ち位置。また、北朝鮮には民主主義があり金一家がたまたま数ある政党の中から一番支持されているから権力にあるだけ.
生活について:
医療費,教育費は無料.高校から物理を習う.
拉致問題について:
彼は自分の国がそんなことをするはずが無いと言って信じなかった.
核・ミサイル問題について
大陸間弾道ミサイルを持つのは、ほかの国も同様で正当な権利.戦争の為でなく、自己防衛のため.また,誰も侵略するつもりはない,みんなと仲良くしたい.
飢餓問題について
今は人々は飢えていない。2008年らへんは危なかった.なせなら、アメリカが貿易を
やめたから.しかし彼がエリート層にいることを考慮する必要があると考える.
歴史認識について:
日本は先の大戦でナチみたいだったやろ,と聞かれた.また同時に隣にいた中国からの学生にも先の大戦で日本は酷かった的なことを言われ終始無言でいるしかなかった.
大使館の中での生活について:
大使館の中に卓球台とバレーコートがある.中でも日本の卓球ラケットはとても良いと言っていたがどこから入手したのか驚きである.
彼とは違う人だが日本語を知っている生徒もいた.どうやって習ったのか聞けばよかったと思う.
この様に日本で生活していては触れられない情報を得られて良かったと思う.しかし他の仲間に何か言われたのか,分からないが彼はその後この話題について話すことはなかった.むしろ少し距離を置かれてしまった.
最後に,ここで大切なのは、彼の話が真実かどうか決めようとすることではなく、実際に北朝鮮を愛する人がどのように自分の国を見ているのか知ることと、立場が異なれば、この場合,北朝鮮の中にいるのか、外にいるのか異なればその国について得られる情報や印象も異なるということと思う.